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2026-07-29

焙煎度で味はどう変わるか

「浅煎り」「深煎り」ってどういう意味?

コーヒー豆のパッケージで、「浅煎り」「深煎り」という言葉をよく見かけますよね。「シティロースト」「フレンチロースト」なんて表示もあります。

浅い方が酸っぱくて、深い方が苦い。何となくそんなイメージは持っていても、実際に何を表しているのか、ちゃんと知っている方は少ないのではないでしょうか。

焙煎度が表しているのは、生豆をどこまで火にかけたか、それだけです。豆の産地や品種とは別の話で、同じ産地、同じ品種の豆でも、焙煎の仕方が変われば味わいはまったく違うものになります。

どの焙煎度が一番おいしいかを決める物差しでもありません。自分の好みがどのあたりにあるかを知るための目盛りです。パッケージを見比べるとき、頭の片隅に置いておくと選びやすくなります。

焙煎度って何?

日本のコーヒー業界では、浅い方から順に、ライトロースト、シナモンロースト、ミディアムロースト、ハイロースト、シティロースト、フルシティロースト、フレンチロースト、イタリアンローストと8段階に呼び分けることが多いです。

これは日本の業界で広く使われている慣習的な呼び方で、世界共通の規格ではありません。もっとざっくり「浅煎り・中煎り・深煎り」の3段階で語られることもよくあります。

8分類も3分類も、境界線がきっちり決まっているわけではありません。フルシティローストを中深煎りと呼ぶ専門家もいれば、深煎りと呼ぶ専門家もいます。

目盛りだけを並べると、こうなります。

浅煎り中煎り中深煎り深煎り極深煎り

浅煎り側から深煎り側まで、帯が途切れず続いているのが分かりますよね。目盛りには5つの呼び方を並べてありますが、8段階の呼び方も3段階の呼び方も、この帯の上のどこかに乗っています。くっきり線引きされたものではなく、なだらかに移り変わっていく一本のグラデーションです。

まずはこの8段階、あるいは3段階という呼び方があることだけ、覚えておいてください。

豆の中で起きていること

生豆を火にかけると、豆の中では大きく3つの変化が進みます。

反応何が起きるか
メイラード反応糖とアミノ酸が結びつき、褐色の物質と香ばしさのもとが生まれる
カラメル化糖が分解して、新しい物質がいくつも生まれる
クロロゲン酸の分解生豆にもともと含まれる酸が、別の物質に変わっていく

このうち、味の変化に一番効いてくるのが3つ目です。クロロゲン酸は生豆に含まれるポリフェノールの一種で、焙煎が進むほど壊れていきます。「浅煎りは酸味、深煎りは苦味」と言われる一番の理由がこれです。

ここで覚えておいてほしいのは、酸が減って、別のところから苦味が湧いてくるわけではないということです。同じクロロゲン酸という物質が、熱によって形を変えていきます。

まず、クロロゲン酸ラクトンという物質に変わります。これが「コーヒーらしい」穏やかな苦味のもとです。焙煎がさらに高温まで進むと、フェニルインダンという、より強くて後を引く苦味の物質に変わっていきます。

2009年に発表された研究によると、生豆を230℃で12分焙煎すると、クロロゲン酸の量は元の半分ほどまで減ります。250℃で21分焙煎すると、ほとんど残らないところまで減ります。

ただ、焙煎が進むほど酸がまっすぐ減っていく、という単純な話でもありません。2024年に発表された研究によると、抽出したコーヒーの酸性度は、ある焙煎度まではむしろ強くなり、そこを超えると弱くなっていきます。クロロゲン酸そのものだけでなく、そこから生まれた物質もさらに分解が進んでいくからです。

酸味と苦味が入れ替わっていく

浅煎り寄りの豆は、クロロゲン酸の分解がまだ進んでいない分、酸味がしっかり残ります。香ばしさもまだ控えめなので、産地ごとの生豆本来の個性が出やすくなります。

深煎り寄りの豆は、クロロゲン酸ラクトンやフェニルインダンといった苦味の物質が増えていきます。香ばしさも強くなる分、酸味は感じにくくなっていきます。

焙煎が進むと、豆の見た目や質感も変わります。水分が抜けて豆が膨らみ、軽くなります。深煎りの豆は内部に細かい空洞ができて、お湯に成分が溶け出しやすくなります。浅煎りの豆はぎゅっと詰まっていて、成分が溶け出しにくい性質があります。深煎りではさらに、豆の表面に油がにじんできます。

同じ抽出時間、同じお湯の量で淹れても、焙煎度が違えば溶け出す量は変わってきます。豆を選ぶときは、この違いも頭の片隅に置いておくと役に立ちます。

「深煎りはカフェインが多い」は本当?

「深煎りの方がカフェインが多い」「いや、浅煎りの方が多い」なんて話を聞いたことはありませんか。

カフェインは熱に比較的強い成分で、焙煎してもそれほど減りません。焙煎度によるカフェイン量の差は、ごくわずかです。

ただし、量り方によって見え方が変わります。浅煎りの豆はぎゅっと詰まっている分、スプーンなどで量ると、同じ体積でもたくさんの豆が入ります。結果として、1杯に使う豆の量が増え、カフェインの総量も増えます。重さ(グラム)で量れば、この差はほとんど消えます。

「深煎りは苦く感じるからカフェインも多そう」という印象と、実際の成分量は別の話です。気になる方は、豆を重さで量ってみてください。印象とのズレに気づけるはずです。

選ぶときのポイント

迷ったときは、8段階のちょうど真ん中あたり、ハイローストやシティローストから試してみてください。酸味にも苦味にも大きく寄っていない位置です。

浅煎りと深煎りでは、豆の性質そのものが違います。浅煎りは成分が溶け出しにくく、深煎りは溶け出しやすい。同じ淹れ方をしても、感じ方は変わってきます。具体的な抽出時間やお湯の温度は、豆や器具によって変わるので、一概には言えません。まずはいろいろな焙煎度を試して、自分の好みがどのあたりにあるか探してみてください。

まとめ

焙煎度は、産地や品種とは別に、生豆をどれだけ火にかけたかを表す目盛りです。8段階、あるいは浅煎り・中煎り・深煎りという3段階で語られますが、境界はくっきり引かれたものではなく、なだらかに移り変わっていきます。

その内側では、クロロゲン酸という同じ物質が、熱によって形を変えながら、酸味から苦味へと表情を変えていきます。次に豆を選ぶときは、パッケージの焙煎度表示を、この目盛りに当てはめてみてください。

浅煎り中煎り中深煎り深煎り極深煎り

出典